連載コラム 「感染管理に関わるあれこれ」
第35回 「感染対策の基本」 榮留富美子
ここ数年、時間が経つのが早い気がします。
子どもの成長も早かったからでしょうか。
あっという間に、2人の息子は20代後半です。
実は、先日、数年ぶりに、
次男が中学校の時にお世話になった部活の先生、
ママ友、パパ友、大人になった子どもたちと食事会(実は忘年会)でした。
先生、ママ・パパ友、子どもたちと色んな話をしました。
時の経過とともに、子どもは勿論、
私たち親も、成長としんか(進化、深化)していました。
先生も親も歳を重ねており、
考えようによっては、シワが深くなり・・・深化なのかも知れません(笑)
これから年末に向けて、忙しくなる方も多いかと思います。
年の瀬、年始・・・暴飲・暴食、体力が落ちやすい時期です。
感染対策としての準備は万全でしょうか。
手洗いや咳エチケット、うがい等、
どれだけ気をつけていても、
病原性微生物(細菌やウイルスなど病原体)を
身体の中に入れないということは難しいことだと思います。
コラムを書き始めて丸1年になりました。
そして第35回のコラムになりました。
読んでくださる皆さま、本当にありがとうございます。
感謝の一言です。
今回は、感染症の発症にならないためにも基本を再確認し、
ご存知の内容だと思いますが復習の意味で「感染対策の基本」についてお話します。
1.感染対策と感染成立の3要素
感染対策は、手指衛生、咳エチケットやうがい等がとても大切です。
職場でもご家庭でも、
感染経路別予防策をしっかり行うことが重要で、
「感染源を持ち込まない、持ち出さない、拡げない」
ことで感染経路を遮断することができます。
そして、十分な栄養・睡眠をとることや
適度な運動を行うこと、
予防接種を受けることなどが重要です。
また、感染予防にはこの
①感染源
②感染経路
③感受性宿主
のそれぞれの段階で、しっかりと対策をとることが重要になります。
つまり、この3つのつながりを断ち切ることが大切です。(図1)
①感染源とは、感染症の原因となる細菌やウイルスなどを持っている人や物、
細菌やウイルスなどに汚染された器具や食品などのことです。
②感染経路とは、病原体(細菌やウイルスなど)が体内に侵入する経路のことです。
接触感染、飛沫感染、空気感染、血液媒介感染などがあります。
③感受性宿主とは、感染のリスクのある人のことであり、
特に抵抗力の弱い人(高齢者や乳幼児、基礎疾患がある人)です。
しかし、誰かが感染症になってから対策をとるのは遅い対応となりますので、
早めの対策として、日頃から感染対策に繋がるよう、
免疫を高めること、体調管理を行うこと、環境整備をして
適正な室温、湿度を保つことなどが大切ですね。
2.感染と発症の違いとは
皆さんは、「感染」と「発症」の違いについてご存知でしょうか。
時々間違いしている方もいるようです。
病原性微生物(細菌やウイルスなど病原体)が、
人の体内に入り込んだ時点から「感染」と思っている人もいるようですが、
その時点では、「感染」ではありません。
これは、病原性微生物が身体の中に入っても、
免疫力が高く、素通りしてしまうことや
消滅してしまうもあるからです。
つまり、病原性微生物である細菌やウイルなどの病原菌が
人の体の中で「定着」したときに「感染した」と言います。
この段階では、まだ病気になったわけではなく、
「感染した」人の免疫機能が
体内に入った病原性微生物が強く異常をきたし
熱や何らかの症状が出た時点で「感染症の発症」、
いわゆる「病気になった」状態となり、
その病的状態を感染症と呼びます。(図2)
そして、感染が成立しても、
まったく病的状態が起こらないで、
健康にみえる場合を「不顕性感染」といい、
症状をあらわす場合を「顕性感染」と呼びます。
3.感染対策の基本は「手指衛生」
手洗いのポイントとなる場所の
手のひら、手の甲、指の間、爪、親指の付け根、手首
30秒以上かけてしっかりと洗いましょう。
手洗い方法は知っている方が殆どだと思いますが、
実際に意識して毎回洗えているでしょうか?
つい忘れている…という方もいらっしゃるかもしれません。
特に、ご家庭での感染を防ぐには、
電車通勤などでも、つり革など
みんなが触れるところにも多く接触していますので、
帰ったらまず手洗いしましょう。
*過去のコラムも参考に読んでください・・・連載コラム 榮留富美子の「感染に関わるあれこれ」
・プロフィール・長崎県大村市出身。2016年3月、陸上自衛隊を定年退職。2016年4月、EIDOME Consulting 開業。自衛隊中央病院高等看護学院卒業後、陸上自衛隊の看護師として、臨床現場、看護教育、部隊カウンセラーとして勤務。特に、感染管理認定看護師取得後は、自衛隊中央病院において専従として感染制御活動に携わる。
現在は、これまで培ってきた知識や技術を活かし、企業とコンサルティング契約、また、日本環境感染学会教育委員としての活動やフィットテスト研究会、感染管理認定看護師課程等において感染管理や労働安全衛生の非常勤講師として活動している。
団体生活でシャワー室はやはり別な方がいいのでしょうか?ブースが数ある訳じゃないので感染症がいくつも起こると分けようがなくなります。疑われる人を最後にして清掃でもよいものですか?
Tさん、コメントありがとうございます。榮留です。
団体生活でのシャワー室の利用方法についてですが、どのような感染症を分けようとされているかわかりませんが、基本的には分けたり最後にする必要はないと考えます。しかし、例えば、ノロウイルスなど感染力の強い感染症については最後にしてお掃除をする方法も一案です。
感染症の疑いのある方を最後にする場合は、倫理的な問題に発展する可能性もありますので、十分なご配慮が必要です。
今回、感染症の伝播を心配されていますが、水垢や石鹸カス、髪の毛やほこり等はカビの発生や細菌の増殖に繋がることもありますので、ぜひ、使用する方々おひとりおひとりが、シャワー終了時にお湯&お水でシャワー室の壁や床を流すことをお勧めします。そして、その汚れを少なくし感染症の原因となるものを軽減することができるでしょう。また、シャワー室の換気に十分にすることも大切です。
一緒に生活している皆さんが気持ちよくシャワー室を使用できるといいですね。今後ともよろしくお願い致します。