連載コラム「感染管理に関わるあれこれ」
第23回「お刺身による食中毒(アニサキス)」 榮留富美子
お刺身大好きな私です。
一番は「ウニ」「エンガワ」・・・
刺身にも寄生虫が潜んでいることがあります。
私が内視鏡室で勤務している時にも、
アニサキスを確保?したことがあります。
しかし、ずーっと技師として勤務してなかったので、
内視鏡検査技師と言いにくい資格です。
アニサキスと言えば、最近、
お寿司や鮭イクラ丼を食べたお笑い芸人さんが立て続けに具合が悪くなったニュース・・・
ましてや8匹のアニサキスはびっくりですよね。
痛かったと思います。
前回に引き続き食中毒の話で、
今回は「お刺身による食中毒(アニサキス)」についてお話します。
1.日本人の食習慣から・・・
日本人の食習慣から考えると昔からあった病気と思われますが、
虫垂炎などと間違えやすいかもしれない病気です。
海産魚介類の生食から、
アニサキス症は1960年に初めてオランダで報告され、
国内でのアニサキスの最初の報告は1965年だったようです…
アニサキスは私と同世代(笑)
当初は診断の方法がなく、
激しい腹部症状から開腹して
患部が切除され、病理学的に
初めてアニサキス症であると
証明された事例がほとんどだったようです。
しかし1970年代以降には、
内視鏡検査の普及とともに
取り除くことができたようですが、
やはり、お魚の食習慣の日本、
多数発生していることが明らかですね。
少し話が変わりますが、昨夜、釣キチの長男夫婦が来ました。
父の日のお祝いで赤ワインを持ってきてくれました。
そこで、私がコラムを書いている時に話してくれたことですが、
「アニサキス、お笑いの二人もあって、最近ニュースで賑わしてるよね。
『アニサキスは,クジラ,イルカ,アザラシ等海産哺乳動物を終宿主,オキアミを中間宿主とする寄生虫らしいよ』食物連鎖的な・・・」
と教えてくれました。
さすがの釣りキチ情報で、終宿主がクジラとか私は知らない情報でした。
他の魚にまつわる寄生虫の話も、それは次回?
2.アニサキス症の症状
魚を生で食べた時、まれにヒトの胃や腸壁に侵入し、
多くが8時間以内に、激しい腹痛を生じ、
嘔気、嘔吐、蕁麻疹などの症状がでます。
寄生している主な魚介類は、
サバに寄生しているイメージがありますが、
他にも、サケ、ニシン、スルメイカ、
イワシ、サンマ、ホッケ、タラ、
マスにも可能性があります。
餌にもよりますが、養殖魚にはアニサキスの寄生は殆どないようです。
3.アニサキスによるアレルギー
昔から「サバのような背の青い魚の生食は蕁麻疹が出る」
とよく言われていました。
サバより、アニサキスがアレルギーの陽性率が高いという結果があります。
患者さまの入院時にアナムネの食物アレルギーを聞くときに
「卵とかカニとかサバとか・・」聞いていました。
今更ながら、反省です。
4.アニサキスの治療
胃の中に、アニサキスがいる場合は、内視鏡検査で取り除いて治療します。
腸にまで入ってしまった場合は、
アニサキスが死んで、吸収されるのを待つしかないようです。
アニサキスは、体内では1週間ほどで死にます。
アニサキスは、通常の料理で用いる程度のお酢では死滅しません。
実際に、しめさばを原因としたアニサキスによるが起きています。
寄生虫は、加熱したり冷凍したりすれば死んでしまいますが、
鮮魚をおろしてそのまま刺身にした場合には、その寄生虫が原因で食中毒になる場合があります。
5.予防策
- スーパーでお刺身を買った場合、家に帰るまでに時間をあけないか、少し時間がかかる場合は保冷剤の利用をお勧めします。
お魚を釣った場合はクーラーボックスで。 - 丸ごと一匹のお魚を自分でお料理する時は、アニサキスは肉眼で確認できますので、よく見て取り除きましょう。
1~4㎝の糸くずみたいなものです。 - アニサキスは魚の内臓に寄生していますが、温度が上がると身のほうに潜り込む性質があるようです。
- 加熱料理がお勧めです。
参考:食品衛生の窓(東京都保健福祉局)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/musi/01.html
参考:東 京 健 安 研 セ 年 報, 62, 2011「わが国におけるアニサキス症とアニサキス属幼線虫」
http://www.tokyo-eiken.go.jp/assets/issue/journal/2011/pdf/01-01.pdf
・プロフィール・長崎県大村市出身。2016年3月、陸上自衛隊を定年退職。2016年4月、EIDOME Consulting 開業。自衛隊中央病院高等看護学院卒業後、陸上自衛隊の看護師として、臨床現場、看護教育、部隊カウンセラーとして勤務。特に、感染管理認定看護師取得後は、自衛隊中央病院において専従として感染制御活動に携わる。
現在は、これまで培ってきた知識や技術を活かし、企業とコンサルティング契約、また、日本環境感染学会教育委員としての活動やフィットテスト研究会、感染管理認定看護師課程等において感染管理や労働安全衛生の非常勤講師として活動している。
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