個人が看護師に仕事を依頼

第21回「歯と口の健康と感染症」~ 感染管理に関わるあれこれ 

21-1

連載コラム 「感染管理に関わるあれこれ」

第21回「歯と口の健康と感染症」  榮留富美子

榮留富美子さんによる連載コラム

第1回「看護師は感染症にかかりやすい?」はこちら

連載コラム第2回 冬になると感染症が流行する理由」はこちら

 

21-1

6月4日から10日までは「歯と口の健康週間」です。

歯磨きや口腔ケアと歯の大切さを伝える1週間です。

食生活が豊かになり、高齢化の今、むし歯だけでなく歯周病など
口に関する病気も対策が必要になりました。

私は小学校の頃から父に連れられて歯医者通いでした。

両親は歯が丈夫ではなかったですね。

むし歯は、ご存じの通り感染症です。

生まれた時には、口腔内にはむし歯菌はいません。

「いつ」「どこで」感染してしまうのでしょうか?

感染経路は大人?!などなど・・・

今回は「歯と口の健康と感染症」についてお話します。

 

1.むし歯菌はどこから?

21-2

むし歯の原因菌であるミュータンス菌は、
親や保育者からの感染が最も多いと言われています。

昔は、親や保育者が噛み砕いた食べ物を
離乳食代わりにあげているのが普通でした。

今考えると恐ろしいことです、と言いつつ、
私もそのことをよく知らず、
その恐ろしいことを子たちにしてしまいました(反省)

ミュータンス菌は、口腔内に一度入り込むと
取り除くことがほとんどできず、
酸を作り、歯を溶かし、むし歯を作ってしまいます。

感染時期は、一般的に乳歯が生え始める生後10ヶ月頃からと言われ、
乳歯が生えそろう頃が最も感染しやすい時期と言われています。

この時期に、むし歯菌の感染を防ぐことが出来れば、
虫歯になるリスクは低く抑えられるでしょう。

つまり、感染対策としては、一番の感染源である両親や保育者が
自らの口の中を常に清潔に保つことが大切です。

そして、食べ物の口移しや噛み与えは避けましょう。

 

2.歯と口の健康週間の歴史

21-3

虫歯予防デーは、かつて1928年から1938年まで日本歯科医師会が、
「6(む)4(し)」にちなんで6月4日に実施していたものでした。

世界大戦中に中止していましたが、
1949年に「口腔衛生週間」として復活し、
6月4日~10日までの1週間になりました。

1952年に「口腔衛生強調運動」、
1956年に「口腔衛生週間」に名称を変更し、
1958年から2012年まで「歯の衛生週間」、
そして2013年より「歯と口の健康週間」になっています。

今から90年近く前から歯の大切さを伝えてきていたんですね。

歯と口の健康のためにも
定期的な検診や歯のクリーニングをお勧めします。

21-4

 

3.口腔内の環境

口腔内の温度は、37度前後に保たれ
唾液によって潤っていています。

食事の後は、食べかすが残り、
温度・湿度・栄養の3条件が揃い、
細菌が繁殖するには最適な環境となります。

成人の口腔内には、300~400種類の細菌が生息し、
歯に付着した歯垢1mgに
1億個以上の細菌がいると言われています。

これらの細菌は、口腔内の清掃を怠ると爆発的に増殖し、
さまざまな全身疾患を引き起こすことが明らかになっています。

口腔内細菌が血管を通って、身体全体を巡り、
各臓器に侵入・繁殖し、さまざまな病気の原因になっています。

例えば、動脈硬化、心筋梗塞、糖尿病、誤嚥性肺炎等も
口腔内の細菌と大きく関係しており、
口腔内の清潔を保たなければ、
全身的な健康を脅かすことになりかねないのです。

 

4.むし歯と唾液の質と量

6月4日の健康テレビ番組で「むし歯になりやすいか、
なりにくいかは、唾液の量と質を測定する。
量が少ないと汚れを落とす力が少なくむし歯になりやすく、
質として酸性を中和する「酸緩衝能」が高ければむし歯にかかりにくい」
ことを伝えていました。

唾液には、むし歯菌が出した歯を溶かす酸を中和したり、
酸で溶かされた歯を再生する力があります。

唾液が減ると歯は、より溶かされ、
再生もできないため、むし歯が増えてしまいます。

他にも、唾液が少なくなると細菌を洗い流す力がなくなり、
細菌が増え発酵して口臭が強くなります。

また、唾液の中に含まれる殺菌作用のリゾチームが少なくなり
歯周病菌に抵抗する力が低下するため歯周病になりやすくなります。

このリゾチームは、口から入ってきた風邪などのウイルスを
防御する働きも持っているため、
唾液が少なくなると
風邪などを引きやすくなってしまいます。

唾液の質は、変えることは難しいですが、
唾液腺のマッサージをして唾液を増やすと洗浄力が増し、
むし歯予防に繋がります。

21-6

1)耳下腺は指3本を使って耳たぶの下の方から口の方へ向かって刺激します。
2)顎下腺は指3本を使ってアゴの下を前に押して刺激します。

*歯磨き・口腔ケア&唾液線のマッサージを行うことで、
さまざまな危険を予防できます。

 

榮留 富美子(えいどめ ふみこ) 

11

・プロフィール・長崎県大村市出身。2016年3月、陸上自衛隊を定年退職。2016年4月、EIDOME Consulting 開業。自衛隊中央病院高等看護学院卒業後、陸上自衛隊の看護師として、臨床現場、看護教育、部隊カウンセラーとして勤務。特に、感染管理認定看護師取得後は、自衛隊中央病院において専従として感染制御活動に携わる。

現在は、これまで培ってきた知識や技術を活かし、企業とコンサルティング契約、また、日本環境感染学会教育委員としての活動やフィットテスト研究会、感染管理認定看護師課程等において感染管理や労働安全衛生の非常勤講師として活動している。

 

 

 

個人で雇う看護師「ナース家政婦さん」

21-1

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です