連載コラム 「感染管理に関わるあれこれ」
第6回 「ノロウイルスはトイレットペーパーを通過する?」 榮留富美子
この冬もノロウイルスによる感染性胃腸炎が猛威をふるっています。
皆さんの周りに、ご家族の誰かがひとりノロウイルスにかかり、
次々に家族全員がかかってしまった話とか聞いたことありませんか?
これは、ノロウイルスの強い感染力と、感染者の排泄物や嘔吐物が
感染源になると考えられます。
今回は、
「ノロウイルスはトイレットペーパーを通過する?」
についてお話します。
1. ノロウイルスの感染力
ノロウイルスの潜伏期間は24~48時間、激しい下痢や嘔吐、腹痛、発熱などの症状ですが、
症状の無い人もいます。発症者の便1gあたり10億個以上、
少なくても100万個程度のウイルスが排出され、症状がない人も、
便中にウイルスが排出されています。
嘔吐物1gあたりのウイルスの数は、100万個程度です。
症状が回復しても、便の中にはウイルスは、しばらくの間排出されていて、
一般的には2週間程度、長い人では、1か月くらいウイルスが排泄されると言われています。
ウイルスを排出しているかどうかは検査が必要になりますが、迅速検査は、
3歳未満と65歳以上の高齢者やノロウイルスにかかることで病気を悪化させたりする
場合の方が保険適応になっていますので、ご注意ください。
2. トイレットペーパーと手洗い
トイレの際、トイレットペーパーでお尻を拭きますが、
大腸菌などは手にはつかないと思いがちですが、
日本トイレ協会によると
大腸菌はトイレットペーパー36枚重ねても通過するそうです。
確かに、トイレットペーパーは薄いですよね。
つまり、ノロウイルスに感染した水っぽいうんちであれば、
手はノロウイルスで汚染されます。
人の腸の中には大腸菌をはじめたくさんの菌がいますから、
トイレは常に汚染源となりうることを忘れてはならなりません。
因みに、同協会では、日本人の平均トイレットペーパー使用量は80cm/回で、
1日の使用量は男性3.5m、女性12.5mとしています。
誰が決めたかわかりませんが、私が看護学生だった頃の寮のトイレに、
「トイレットペーパーは大切に!1回○○cmまで」の貼紙がありました。
「いやいや、足りないでしょ!」とひとり突っ込みしていました。
今は、そんな貼紙、もちろんありません。(笑)
皆さん、トイレの後、ちゃんと手を洗っていますか?
手指衛生は基本です。
手洗いのポスターは、厚生労働省HP啓発ツールを引用しています。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/keihatu.html
・プロフィール・長崎県大村市出身。2016年3月、陸上自衛隊を定年退職。2016年4月、EIDOME Consulting 開業。自衛隊中央病院高等看護学院卒業後、陸上自衛隊の看護師として、臨床現場、看護教育、部隊カウンセラーとして勤務。特に、感染管理認定看護師取得後は、自衛隊中央病院において専従として感染制御活動に携わる。
現在は、これまで培ってきた知識や技術を活かし、企業とコンサルティング契約、また、日本環境感染学会教育委員としての活動やフィットテスト研究会、感染管理認定看護師課程等において感染管理や労働安全衛生の非常勤講師として活動している。
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