この病院は3階建てです。
入院患者さんはエレベーターを使用しますが、スタッフは階段を使用するように言われています。
カルテや書類の受け渡しは、助手さんに頼むことも多いですが、使い走りは新人の役目と
積極的に行っています。
階段を降りると健康にいいホルモンが出るそうなので、降りる時は良いのだけれど、
昇りはキツイ!
1階は外来です。
ちょっと慣れてきて気が付いたことがあります。
患者さんが少ない・・・。
水・金曜日だけは混んでいるのですが、他の曜日はがらーんとしています。
その日は大学病院から来ている先生が外来をしています。
ちょっと気になります。
でも、病棟はそこそこベッドが埋まっています。
内訳は、長く入院している高齢者と救急車で運ばれてきた患者さんです。
先日若い男性が運ばれて来ました。
内臓疾患で、半月ほどの入院予定となりました。
その方は外国の方で、日本語がほとんど通じません。
時々通訳の方が来て下さいますが、看護師とは片言の日本語と、片言の英語での会話です。
ある日、その方のお友達が来てみかんを一箱置いていきました。
その後、この若い男性患者さんは同じ部屋の方、5名にみかんを6個ずつ配り始めました。
なんと律儀なこと。そういえば、昔私も見た光景です。ふと昔を思い出しました。
・・・思い出に浸っている場合ではない!
すぐ、先輩看護師に報告に行きました。
「もう!ダメだってのに!」
とスゴんでその部屋に行った先輩。
「気を遣わなくていいんですよ。食べられない方もいますし・・・」
と説明するけど、全く通じていない様子です。
残念ながら英語で説明できる看護師もおらず、ジェスチャーで必死に伝えてみます。
やっと何とか理解してもらった感じでホッとしました。
「いや~、英語は大事ですね。ちゃんと勉強しておけば良かった!」
などと先輩と話して、プチ達成感を味わいつつその日は過ぎました。
ところがその翌日、出勤してびっくり!
あの男性患者がいなくなっているのです。
ええ~っ!
誰も行き先を知りません。
リュック一つだけ残されて姿が見えません。
病院は大騒ぎになりました。
あのミカンは、「お世話になりました」という別れのご挨拶だったのか・・・。
私達だけで事を済ませて、上に報告しなかったばかりにこんな事に・・・。
どうしよう、自殺とかだったら!
昨日の出来事を伝えた後、ハラハラドキドキしながら仕事を続けます。
・・・それから数時間後。
彼が普通に戻ってきました。
何の事はない、彼は食べたいものがあって外出したのでした。
勝手に外出してはいけない事を知らなかったのです。
そして手には、同室患者さんへのお土産のたい焼き。
どんだけ律儀やねん!
昨日の話は全く通じてなかったってことか・・・。
やっぱり英語は大事だわ、先輩!
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