連載コラム 「感染管理に関わるあれこれ」
第38回 「おすすめは鼻呼吸!」 榮留富美子
梅や桃の花の季節から、サクラの季節となりますね。
今年は飛散の量も多いようですが、目のかゆみ、
くしゃみや鼻水がつらいと話される花粉症の方々が
私の周りにも沢山いらっしゃいます。
ところで、皆さんは普段から口呼吸ですか?
それとも鼻呼吸ですか?
この時期の花粉症の方々は、鼻水や鼻詰まりに悩まされ、
鼻での呼吸なんてできないよと嘆く人もいるかと思います。
本来の呼吸は「鼻」でするものです。
いきなりですが赤ちゃんがおっぱい飲んでいる時の様子を見たことがありますか。
おっぱいを口いっぱいほおばり飲んでいる姿、
生まれてすぐから鼻呼吸ですよね。
しかし、風邪や鼻の病気などをきっかけに口呼吸に変わってしまうことがあります。
今回は「おすすめは鼻呼吸!」についてお話します。
1.口呼吸より鼻呼吸に・・・
小さい頃に親御さんとかに
「口が開いてるとおバカさんみたいだよ。閉じなさい。」
なんて言われたことありませんか。
私自身の小さい頃の記憶は不明ですが、
ふたりの息子たちには「口開いてるとちょっとアホみたいだよ」と言ってました。
そんなおバカさんやアホとかの理由ではなくて、鼻呼吸が大事だからです。
でもきっと息子たちには伝わっていない気がしますが・・・。
ところで、ご存じかもしれませんが、「いびき」の原因は、口呼吸にあるとも言われます。
通常の舌の位置は、上顎にぴったり付いた状態ですが、
口を開けると上顎と舌は離れてしまいます。
口を開けている状態が多いと舌の筋肉や口を閉じる力が落ち、
自然と舌の位置が下り気道が狭くなり、いびきが出やすい状態を作り出してしまうのです。
「たかがいびき、されどいびき・・・」、無呼吸は命をも危険にさらします。
口呼吸は、睡眠時無呼吸症候群の一因にもなります。
随分前ですが、耳鼻科の病棟に睡眠時無呼吸症候群の疑いで検査入院された患者さんが
低酸素脳症になり、ADLが低下し、
自力でトイレにも行けなくなった方がいました。
治療の結果、お元気になり退院されましたが、驚きを隠せない症例でした。
ここまでの話で、口呼吸より鼻呼吸がおすすめであることがご理解できるかと思います。
2.鼻呼吸のメリット
呼吸ができていれば、口呼吸と鼻呼吸でもどちらでもいいのでは
と思う方もいるかもしれませんが、
鼻呼吸のメリットを考えてみましょう。
口呼吸は、口を閉じないままの呼吸となり、
口の中が乾燥しやすくなり細菌などの繁殖に繋がります。
鼻呼吸は、口を閉じて呼吸をするので
口腔内には唾液が十分に出て潤っていることのメリットがここにあります。
また、鼻には繊毛があり、鼻呼吸の方がほこりやウイルスなどの細菌などが入りにくくし、
体内に異物が入らないようにフィルターの役目を担っています。
鼻腔粘膜にある無数の繊毛、細菌やウイルスなどの病原菌を除去できます。
病原菌等の大きさが15μmでしたら100%、
5μmでしたら50%を繊毛でキャッチでき、
くしゃみなどで異物として外に出すことができます。
つまり、感染防御に関わる鼻、「鼻呼吸のメリット」と言えます。
3.唾液の効能
(1)口臭予防
鼻呼吸の人が口呼吸の人より、口臭がしにくい傾向にあるそうです。
これは、唾液が出ることにより口腔内の乾燥を防ぎ、細菌などの繁殖を抑えるからです。
そして、口呼吸は、口をほとんど開いた状態で口の中は乾燥し、
細菌などが繁殖しやすい環境になり口臭の原因に繋がります。
唾液が十分に出ているかどうかが口臭の有無に関係していますね。
(2)齲歯、歯周病予防
口呼吸を続けていると口内の唾液が減り、嚥下しにくくなる、
口の中がパサパサになるなどの症状が起こります。
いわゆるドライマウスです。
唾液が少なくなり、細菌の繁殖を防ぐ効果が薄れ、齲歯や歯周病が進行しやすくなります。
ドライマウスの原因は、喫煙、ストレス、生活習慣、
更年期、薬の副作用etc・・・も考えられますが、
口呼吸もドライマウスの原因であることを理解しておくことが大切です。
*できるだけ鼻呼吸、唾液が出るように噛む動作を行い、唾液の分泌を増やしましょう。
*私のお気に入りの『あいうべ体操』のご紹介です。
福岡・みらいクリニックの今井一彰先生が提唱する『あいうべ体操』
これは、1年ほど前に、主人がインターネットで見つけて教えてくれました。
口を大きくあけて「あ~、い~、う~、べ~」と発声するだけの簡単な体操です。
口呼吸から鼻呼吸への改善にも繋がります。
花粉症やアトピー、喘息などのアレルギー性疾患、
インフルエンザや風邪の予防に加え、
高齢者に多い誤嚥の予防にも効果を発揮できるようです。
ぜひ、みらいクリニックのHPをご参照ください。
https://mirai-iryou.com/aiube/
・プロフィール・長崎県大村市出身。2016年3月、陸上自衛隊を定年退職。2016年4月、EIDOME Consulting 開業。自衛隊中央病院高等看護学院卒業後、陸上自衛隊の看護師として、臨床現場、看護教育、部隊カウンセラーとして勤務。特に、感染管理認定看護師取得後は、自衛隊中央病院において専従として感染制御活動に携わる。
現在は、これまで培ってきた知識や技術を活かし、企業とコンサルティング契約、また、日本環境感染学会教育委員としての活動やフィットテスト研究会、感染管理認定看護師課程等において感染管理や労働安全衛生の非常勤講師として活動している。
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