連載コラム 「感染管理に関わるあれこれ」
第37回 「口腔ケアは大切!」 榮留富美子
立春を過ぎましたが、今年の冬将軍はすごいです。
全国各地の雪・・・私も被害に遭いました。
なんとアイスバーンで転倒し打撲と捻挫してしまいました。
今は、痛みも治まり回復しました。
しかし、それもつかの間、今度は数日後の夜中、
奥歯の激痛があり、歯医者さんでレントゲンを撮ると
根っこが化膿して縦割れに・・・(涙)。
その歯は前に治療していましたが、むし歯が悪化したのか、
ストレスでの歯ぎしりしたのか、原因はわかりませんが、
根っこまで割れている片側半分を抜歯することになりました(涙)
私自身、 ここ数週間は「満身創痍(まんしんそうい)」です。
さらに健康を意識いたしました。
歯を痛めてしまった原因を考えながら
歯みがきや口腔ケアの大切さを身にしみ、
今回は「口腔ケアは大切!」についてお話したいと思います。
1.口腔ケアとインフルエンザ
口腔ケアの話なのに、インフルエンザと思われた方もいらっしゃるかと思います。
さて、口は、「食べる」「話す」「呼吸する」という役割と同時に、
細菌やウイルスの出入口になります。
まだまだ、猛威を振るっているインフルエンザ・・・その予防対策は、
ご存じの通り、手洗いやうがい、ワクチン接種などですが、
実は、口腔ケアもインフルエンザ予防に有効です。
奈良県歯科医師会の調査で、介護施設で高齢者を対象に、
歯科衛生士が口腔ケア(口腔清掃や清掃の指導)を実施したところ、
通常の口腔清掃をしていた施設に比べ、予防接種の有無に関わらず、
インフルエンザの発症が10分の1に抑えられたという報告があります。
口腔ケアって・・・すごいですよね。
2.口腔内の細菌
口の中には、齲歯や歯周病の原因となる菌が沢山います。
口腔内の環境を考えてみましょう。
37℃前後に温度は保たれ、唾液によって湿潤し、
そこに食べ物のカスである栄養が豊富な状態であり、
口腔内の菌にとって最適環境です。
「口の中に?菌?」と思う人も多いかと思いますが、
例えば腸内細菌のように、口腔内の細菌が適切に存在することで、
多くの病原体の感染を防ぐことに繋がっていることも事実です。
しかしながら増えすぎると厄介です。
口腔内には、常に300~700種
(カンジダ、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、肺炎桿菌など全身疾患の原因菌)
の細菌や真菌が生息し、歯に付着している歯垢(プラーク)1㎎には
1億個以上の細菌がいるそうです。
歯みがきなどの口腔ケアが不十分で、不衛生になると細菌が増え、
歯周病菌が出す酵素(プロテアーゼなど)が粘膜の防御機能を破壊してしまい、
粘膜にウイルスが定着しやすくなり感染症が発症してしまいます。
また、嚥下機能が弱っているご高齢の方では、
唾液に混ざった細菌が肺に入り、
誤嚥性肺炎を発症してしまうことはよく知られていると思います。
病気のリスクを減らすためにも、
口腔ケアをしっかり行ってお口の中を清潔に保つことが大切です。
3.口腔ケアは大切
口腔ケアは、齲歯や歯周病を予防するだけではなく、
インフルエンザや誤嚥性肺炎といった全身的な感染症を予防するためにも、
とても大切だということが理解できたでしょうか。
実は、別の研究では、1日2回以上歯みがきをする人は、
1日1回の人に比べると、口の中や食道のがんになるリスクが3割低いことが報告されています。
*免疫力アップやがん予防のためにも、口腔ケアをしっかり行いましょう。
*歯みがきや口腔ケアの際、口蓋や舌の表面にも細菌は潜んでいるので、
歯だけでなく舌や粘膜の清掃もしっかり行いましょう。
・プロフィール・長崎県大村市出身。2016年3月、陸上自衛隊を定年退職。2016年4月、EIDOME Consulting 開業。自衛隊中央病院高等看護学院卒業後、陸上自衛隊の看護師として、臨床現場、看護教育、部隊カウンセラーとして勤務。特に、感染管理認定看護師取得後は、自衛隊中央病院において専従として感染制御活動に携わる。
現在は、これまで培ってきた知識や技術を活かし、企業とコンサルティング契約、また、日本環境感染学会教育委員としての活動やフィットテスト研究会、感染管理認定看護師課程等において感染管理や労働安全衛生の非常勤講師として活動している。
コメントを残す