連載コラム「感染管理に関わるあれこれ」
第28回 「シーツ類のお洗濯のタイミングと感染症」 榮留富美子
今年の夏は、大雨、落雷と不安定なお天気ばかりで関東は長雨でした。
でも、暑い夜は、寝ている間に汗びっしょりです。
汗びっしょりのお布団やシーツのお洗濯、
今年は乾燥機が大活躍でした。
汗っかきに主人、週1回以上のシーツや枕カバー、
枕まで、お洗濯をしています(笑)
フローレンス・ナイチンゲールは、
「看護覚書」の第8章に
「何日も何週間も風に当てて乾かしたことのない寝具類にくるまってきた患者は、
そこに浸み込んだ自分の身体の発散物を繰り返し再吸収してきた。
そのために発熱することがある。」と記しています。
つまり、発熱は寝具類からくるひとつの症状なんですね。
今回は「シーツ類のお洗濯のタイミングと感染症」についてお話します。
1.睡眠中の汗
「寝汗」、人は誰でも一晩におよそコップ1杯約200mlの汗をかいていると言われています。
夏場はその1.5倍の300mlです。
人間の体温で温められたお布団の中は、高温、多湿。
まさに、雑菌繁殖の好環境と言えます。
寝汗の量が多すぎるのは、たとえば、
パジャマやシーツがぐっしょりと濡れてしまうといった人は、
寝汗の量が多いといえます。
汗を大量にかき、服を濡れたまま放っておくと気持ち悪いですよね。
2.汗の成分と役割
汗は、大部分が水であり、水以外の成分では、塩化ナトリウムが約0.6%、
その他ごく微量の尿素や塩素、カルシウム、
マグネシウム、乳酸などのミネラルで構成されています。
汗の成分は、血液の血漿から作り出されています。
身体に必要なミネラルが、汗として排出される前に、体内に再吸収されます。
汗の重要な役割は、体温の調節機能です。
気温の上昇や運動、カゼの発熱などで体温が高くなった時などに、汗が出ます。
汗の水分が、皮膚の上で蒸発するときに気化熱として熱が奪われ、体温を保つことができます。
3.シーツ類のお洗濯
学生の時の寮では、シーツは自分ではお洗濯していませんでした。
1週間に1回提出してノリでバリバリなシーツに寝ていました(笑)
アメリカの国立睡眠機構が25~55歳の日本人250人を対象に行った調査によると、
シーツを週に1回以上替える人は11%、週に1回は29%、
2週間に1回は22%、3週間に1回は9%、
それ以下は28%という結果でした。
メキシコでは、週に1回以上替えている人が81%、イギリスは68%、
アメリカとカナダでも6割以上の人が週に1回以上替えていることがわかったのです。
欧米では乾燥機を使う習慣があるのに対して、
日本では大きなシーツを洗って外で干すのはちょっとした大仕事で、
頻繁に洗濯をするのがと難しいのでしょうね。
参考:(アメリカ国立睡眠財団) National Sleep Foundation「2013 International Bedroom Poll」
4.シーツ類を洗わないときのリスクと洗濯のタイミング
人は、寝ている間に汗や皮脂などを分泌しています。
つまり寝具には、髪の毛やフケなども残ります。
汚れが残ったまま寝続けていると
フケ等の汚れを餌にダニがものすごい勢いで繁殖してしまうことになります。
さて、みなさんは、シーツをどのくらいの頻度で洗っていますか?
これからシーツはどのタイミングで洗いますか?
清潔なシーツで心地よい睡眠に繋げるためにも、
シーツ類のお洗濯のタイミングは1週間に1回程度をお勧めします。
干すのが大変な時は私のように乾燥機を使うといいですよ。
5.寝汗と感染症
寝汗?感染症?と思うかもしれませんが参考までに・・・
結熱が出る・疲労感・咳など、風邪と似たような症状が出る結核は、
これらの症状が2週間以上続き、寝汗を大量にかくという場合もあります。
結核を発症したときの寝汗は、
アンモニアのような臭いがすることがあると言われています。
また、風邪をひいたときも寝汗をかきやすくなります。
風邪をひくと多くの場合熱が出ます。
これは、免疫に関わる細胞が風邪の原因となる細菌やウイルスと闘うためです。
風邪によって上がった体温を下げるために、寝汗がでます。
*寝汗が感染症に繋がっていることもありますので、
風邪と似たような症状が長引く時などは病院を受診しましょう。
・プロフィール・長崎県大村市出身。2016年3月、陸上自衛隊を定年退職。2016年4月、EIDOME Consulting 開業。自衛隊中央病院高等看護学院卒業後、陸上自衛隊の看護師として、臨床現場、看護教育、部隊カウンセラーとして勤務。特に、感染管理認定看護師取得後は、自衛隊中央病院において専従として感染制御活動に携わる。
現在は、これまで培ってきた知識や技術を活かし、企業とコンサルティング契約、また、日本環境感染学会教育委員としての活動やフィットテスト研究会、感染管理認定看護師課程等において感染管理や労働安全衛生の非常勤講師として活動している。
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