第13回「手洗いと皮膚の常在菌」

えいどめ13-2

連載コラム 「感染管理に関わるあれこれ」

第13回 「手洗いと皮膚の常在菌」 榮留富美子

榮留富美子さんによる連載コラム第1回「看護師は感染症にかかりやすい?」はこちら 連載コラム第2回 冬になると感染症が流行する理由」はこちら
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4月になりましたが寒い日が続いています。

写真は、数日前の目黒川の夜桜です。とてもきれいでしたよ。

「ナースメディア」での連載コラムをスタートして、毎回のように手洗いの大切さを話してきている私ですが・・・

先日、ご質問を頂きました。

「ナースメディア運営責任者の喜多さま」からです・・・(笑)

  • 手の常在細菌バリアのバランスと感染リスク
  • 手洗いによる手荒れについて等々・・・

今回は「手洗いと皮膚の常在菌」についてお話します。

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1.皮膚の常在菌

人の身体には常在菌と呼ばれるたくさんの菌があり共生しています。

皮膚にも表皮ブドウ球菌などの善玉菌と言われるものなどがありバリアになっています。

皮膚のバリアとは、皮膚を外部の刺激や雑菌から守り、皮膚の潤いを保つ機能のことです。

その表皮ブドウ球菌は、皮脂を食べた後、皮脂を脂肪酸とグリセリンに分解して皮膚を覆ってくれるので皮脂膜形成に重要な存在になっています。

 

2.手荒れと保湿

さて、手は洗えば洗うほどキレイになるのでしょうか?

先月初めに、義父の入院に伴い、私のお洗濯の回数が増え、パジャマ等にシミがあると漂白剤や石けん、お湯を使い揉み洗いをしています。

結果、私の手はカサカサになり皮膚のバリアのバランスが崩れてしまいました。

つまり、手の洗い過ぎのような状態になっています。

今は、お風呂上りや寝る前は特に念入りに保湿剤をたっぷり使用しています。

手洗いを「お湯」や「石けん」を使い「ゴシゴシ」!

これでは皮膚は乾燥し傷がつき、そこに悪玉菌が付着すると感染してしまいます。

例えば、小さいお子さんのとびひ(伝染性膿痂疹)は、悪玉菌の黄色ブドウ球菌やMRSAなどが付着して発症する病気です。

 

3.病院における手洗い

病院における手洗いには、下記の表の通り、日常的手洗い(social handwashing)、衛生的手洗い(hygienic handwashing)、手術時手洗い(surgical handwashing)の3種類があります。

日常的手洗い

(social handwashing)

配膳、トイレなど日常的行為の前後の手洗い
衛生的手洗い

(hygienic handwashing)

注射、ガーゼ交換など医療行為の前後の手洗い
手術時手洗い

(surgical handwashing)

手術に際しての手洗い

 

CDC「隔離予防策のためのガイドライン(2007年)」では、下記の表のように勧告されています。

目に見えない汚れ ・速乾性手指消毒薬
目に見える汚れ ・石けんと流水による手洗い

(必要に応じて速乾性手指消毒薬)

消毒薬抵抗性の強い微生物を対象とする場合 【エンベロープを有しないウイルス】
・石けんと流水による手洗いの後、速乾性手指消毒薬を使用

【芽胞】
・石けんと流水による念入りな手洗い

 

4.手洗いのタイミングとハンドケア

(1) 手洗い方法は、手のひらや手の甲、爪、指の間、親指のまわり、手首の順に30秒以上洗いましょう。

(2) WHOのガイドライン(2009年)「手指衛生を実施する5つのタイミング」

①患者へ接触する前

②清潔操作および無菌操作の前

③体液曝露の可能性があった後

④患者へ接触した後

⑤患者の周辺環境へ触れた後、を挙げています。

そして、食事の前やトイレの後、帰宅時、鼻をかんだ時や咳やくしゃみの後などのタイミングも重要です。

(3) ハンドケア

手洗いは大切ですが、皮膚を傷めるゴシゴシ洗いは感染対策上よくありません。

手を洗ったら手荒れ防止のためにも、ハンドクリームなどの保湿剤を塗るなどの「ハンドケア」も忘れずに行ないましょう。

 

  • 手洗いの後の「ハンドケア」も忘れずに!
えいどめ13-2

 

 

榮留 富美子(えいどめ ふみこ) 

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・プロフィール・長崎県大村市出身。2016年3月、陸上自衛隊を定年退職。2016年4月、EIDOME Consulting 開業。自衛隊中央病院高等看護学院卒業後、陸上自衛隊の看護師として、臨床現場、看護教育、部隊カウンセラーとして勤務。特に、感染管理認定看護師取得後は、自衛隊中央病院において専従として感染制御活動に携わる。

現在は、これまで培ってきた知識や技術を活かし、企業とコンサルティング契約、また、日本環境感染学会教育委員としての活動やフィットテスト研究会、感染管理認定看護師課程等において感染管理や労働安全衛生の非常勤講師として活動している。

 

えいどめ13-2

3 件のコメント

  • 訪問入浴をしています。利用者の手をゴシゴシ洗う人、背中も痒いと言えばゴシゴシ洗う人いますが、実際科学的根拠に基づいてないと私は思います。

    正しい洗体方法をご伝授お願いします

    • 川崎さま
      コメントありがとうございます。榮留です。
      訪問入浴のお仕事大変ですよね。お疲れ様です。

      皮膚のトラブルのある利用者さんのお身体(皮膚)を考えると手や背中をゴシゴシは皮膚バリアを壊してしまい、かゆい、赤くなる、ブツブツができるなどの皮膚のトラブルが悪化し皮膚常在菌が悪さをすることがあります。皮膚のトラブルがある場合、皮膚が敏感になっていると思いますので過度な刺激を与えないのが望ましいです。

      コラムにも書いたお湯で洗うと皮膚バリアが壊れてしまい、皮膚を外部の刺激や雑菌から守れなくなり皮膚の潤いが保てないことになります。
      つまり、洗い過ぎやこすり過ぎ、熱すぎるお湯も皮膚に刺激や負担をかけ皮脂膜形成ができなくなります。

      正しい洗体方法についてですが、これまでの経験や感染対策上からお話します。
      体臭への影響のある皮脂分泌物が多い頭や顔、汗をかきやすく皮膚が接しているような腋下、足の裏や足の指の間、肘の内側、膝の裏などをよく石けんを泡立てて洗いましょう。デリケートゾーンもやさしく丁寧に洗いましょう。
      現在、かゆみがあったり、赤くなったり、ブツブツがあるところは、やさしく洗うことが望ましいです。洗う際は、たっぷりの泡立てた石けんで手で洗うぐらいでも十分だと思います。また、洗体用のタオルもナイロンよりは綿の素材が低刺激です。
      乾燥している皮膚には保湿剤を塗り、やさしくマッサージすることで血流がよくなります。

      また、お話聞かせてください。
      よろしくお願いいたします。

      • ありがとうございます。
        いつも疑問に思いつつ仕事をしてました。
        痒いところをゴシゴシ洗うのは一時的なものと思ってました。
        今度仕事場で提案したいと思います

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