連載コラム 「感染管理に関わるあれこれ」
第30回 「インフルエンザがうつりやすい人」 榮留富美子
今月に入り、東京、神奈川・・・・と今季もやや早めですが、
インフルエンザによる臨時休業措置(学級閉鎖)が続けて報告されました。
まだまだ先と思っていたインフルエンザですが、
着実に私たちのそばに忍び寄ってきています。
さてさて、これからの時期、インフルエンザに罹ってしまった人たちから、いろんな声を聞きそうです。
「予防接種、受けたのに…」
「ちゃんとうがいや手洗いはしているし…」
「マスクだってつけてるし…」
私は、インフルエンザにかかってしまうと
「感染の看護師なのに残念・・」と言われるのが怖いです(笑)
今回は「インフルエンザがうつりやすい人」についてお話します。
1.インフルエンザの発生状況
厚生労働省からの直近のインフルエンザの発生状況について公表された内容ですが、
定点あたり報告数の総数は1,081で、昨年同期の2倍以上、
学級閉鎖や休校の施設が30施設に上っています。
今季は、例年より流行が早まる傾向なのでしょうか??
厚生労働省や国立感染症研究所、各自治体の感染情報をチェックしてみるといいかと思います。
参照:平成 29 年 第 37 週(平成 29 年 9 月 11 日~ 9 月 17 日)分のインフルエンザの発生状況
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000178233.pdf
2.インフルエンザの感染経路
インフルエンザの感染経路は3つあります。
①感染者のくしゃみや咳によるウイルスを吸い込んで感染する飛沫感染
②感染者の飛沫として飛び散ったウイルスは、
しばらく空中を浮遊していているものを吸い込み感染する空気感染
③感染者のくしゃみや咳をする際に押さえた手は、
手洗いしないまま色んなものを触り、
ウイルスが付着したその物に接触してウイルスをもらい感染する接触感染
この3つのウイルスの通り道を遮断することが大切な感染対策となります。
3.インフルエンザがうつりやすい人
インフルエンザは、感染してから1~2日ほどで症状が出始めます。
この症状が出るまでの潜伏期間にもウイルスは活発で、
周囲にいた人にうつしてしまいます。
実は、症状が治まった後も、まだ、ウイルスを排出してるのです。
しかし、インフルエンザ、誰にでも100%うつってしまうわけではないですが、
どんなにマスクや手洗い、うがいなどの予防をしていても感染してしまうことがあります。
その時の抵抗力、免疫力の状態によってかかりやすさが異なるかと思います。
「インフルエンザがうつりやすい人」は、体調の低下、疲労感、睡眠不足などで免疫が下がって
自分の身体を守れなくなった状態の人です。
元々病気に罹患し免疫が下がっている人、子どもや高齢者もうつりやすい人ですね。
例えば、家族の誰かがひとりインフルエンザにかかったら、
看病しながら自分が感染しないかと不安になります。
看病するご家族にうつってしまういわゆる家族感染、
看病する人の密着度を考えると感染のリスクが高いのは言うまでもないですね。
看病疲れにならない工夫も必要です。
同じ家で暮らし、看病をしてもインフルエンザがうつらない人は、
うつらないようにするための予防対策をきちんと行っているんでしょうね。
普段から免疫力を高められる生活をすることが大事です。
栄養、睡眠、運動・・・です。
4.インフルエンザワクチン
インフルエンザにかかっても重症化しないための手段としてのインフルエンザの予防接種は、
10月初旬からのスタートです。
インフルエンザワクチンは、他の地域での流行状況やここ数年での傾向を踏まえて、
今年はどのような型のウイルスが流行するかを厚生労働省や国立感染症研究所が予想し、
毎年微妙に異なるものを製造しています。
今年は以下のような株の流行が予想され、2017-2018年冬インフルエンザワクチン株が決まり製造されています。
■ A/Singapore(シンガポール)/GP1908/2015(IVR-180)(H1N1)pdm09
■ A/Hong Kong(香港) /4801/2014(X-263)(H3N2)
■ B/Phuket(プーケット)/3073/2013(山形系統)
■ B/Texas(テキサス)/2/2013(ビクトリア系統) (引用:国立感染症研究所)
南半球のオーストラリアなどの国では、
北半球と季節が逆になるため、
北半球が夏の間に南半球でどのようなウイルスが流行したかが、
その後の北半球の流行状況に反映されます。
因みに、2017年夏のオーストラリアでは
H3N2と呼ばれるA型インフルエンザが流行していました。
参照:季節性インフルエンザワクチンの供給について
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000177816.pdf
インフルエンザ予防接種を受けるタイミングですが、
ワクチン接種後、免疫ができるまでに2週間程度かかり、
ワクチンの効果は5カ月ほどで切れてしまいます。
冬の流行期間をカバーするためには、
10月末~11月、12月はじめまでに接種をするのが理想的かもしれません。
*まじかに迫ってきているインフルエンザの予防 「うつりやすい人」から「うつりにくい人に」
①インフルエンザワクチンを接種しましょう。
②普段からの免疫力を高める生活をしましょう。
③手洗い、うがい、咳エチケット、マスク・・・の感染対策をしましょう。
・プロフィール・長崎県大村市出身。2016年3月、陸上自衛隊を定年退職。2016年4月、EIDOME Consulting 開業。自衛隊中央病院高等看護学院卒業後、陸上自衛隊の看護師として、臨床現場、看護教育、部隊カウンセラーとして勤務。特に、感染管理認定看護師取得後は、自衛隊中央病院において専従として感染制御活動に携わる。
現在は、これまで培ってきた知識や技術を活かし、企業とコンサルティング契約、また、日本環境感染学会教育委員としての活動やフィットテスト研究会、感染管理認定看護師課程等において感染管理や労働安全衛生の非常勤講師として活動している。
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