連載コラム 「感染管理に関わるあれこれ」
第14回 「お口のケアと感染症」 榮留富美子
皆さん、「お口のケア」は大丈夫ですか?
入院中の義父も介護中の義母も入れ歯世代で、洗浄剤による漬け置き洗いをしています。
義母の食事の時に入れ歯が“パカパカ”・・・入れ歯が合っていないようです。
合っていない入れ歯を使い続けると、その刺激によって歯茎が痩せたり、入れ歯がますます合わなくなったりすることが懸念されるので、歯科受診を勧めているところですがなかなか手ごわく、段々と口うるさい嫁になっているかもしれません(笑)
むし歯、歯周病、唾液の分泌量が減少は、口腔内の細菌バランスが崩れます。
口腔内のバリア機能が悪くなると感染症に繋がり、口の中に細菌が増えているので誤嚥性肺炎や口腔カンジダ症が起きやすくなります。
今回は「お口のケアと感染症」の話をします。

1.口腔内バリア
口腔内は様々な細菌や有害物質の入り口でもあり、体内への侵入のバリアの役割を果たしています。
口腔は粘膜組織であり、粘膜それ自体が免疫としての働きをしています。
口腔内が健全な状態でない場合、この免疫としての働きが不十分になり免疫力が下がります。
そして、歯周病菌等の細菌の力が強まると、歯周病やむし歯を引き起こしやすくなります。
2.誤嚥性肺炎
日本におけるここ数年の死因第3位は肺炎です。
肺炎による死亡者のほとんどは高齢者で、その多くは「誤嚥性肺炎」で亡くなっています。
誤嚥性肺炎は、食べ物を飲み込む動作である嚥下機能が障害され、食べ物が気管に入ってしまう誤嚥が一因です。
肺炎が原因で亡くなる65歳以上の高齢者のうち、96%が誤嚥性肺炎によるものというデータもあり、高齢者であれば誰でも発症の可能性がある病気です。
平成 27 年(2015) 人口動態統計の年間推計-厚生労働省
www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suikei15/dl/2015suikei.pdfを参考にしてください。

3.口腔カンジダ症
口腔内や入れ歯にカンジダ菌が増殖した場合、加齢やストレスなどで抵抗力が落ちて口腔カンジダ症になり全身に影響することがあります。
口腔カンジダ症とは、口の中に白い苔のようなもの付着、ヒリヒリとした痛み、口角が切れるなどの舌や粘膜に異常がみられます。
口臭の原因や入れ歯に色素や歯石が付きやすくなります。
残っている自分の歯が虫歯や歯周病になりやすくなります。
そして、身体の抵抗力が低下している場合は、気管支や肺、心臓などに感染し重篤な症状をもたらすこともあります。
きちんとお手入れを行うことでこれらを予防できますので、入れ歯をこまめに洗って口の中を清潔に保つことが大事です。
4.お口のケア
口の中の細菌が作り出す「プロテアーゼ」という酵素が粘膜を破壊することで、さらにウイルスが侵入しやすくなることもわかっています。
歯垢や歯石、舌苔などがあってお口の中が汚れていると細菌が増殖してプロテアーゼも増えるので、歯みがきでお口の中を清潔にしておくことが感染症予防になります。
そして、むし歯や歯周病は治療しましょう。

因みに、お口の中の酸性が唾液によって中和され、エナメル質の再石灰化まで30分かかるため、食後30分後の歯磨きが最適で「食後すぐの歯みがきは良くない」という説もあるようですが、日本小児科歯科学会の見解を参考にしてみてはどうでしょうか・・・。
私は小児科歯科学会の見解「通常の食事の時は早めに歯みがきをして歯垢とその中の細菌を取り除いて脱灰を防ぐ」ことをお勧めします。
日本小児歯科学会 食後の歯みがきについて
http://www.jspd.or.jp/contents/main/proposal/index09.html

*入れ歯のお手入れや歯磨き、感染症予防のため口の中を常に清潔に保つことがとても大切です。
・プロフィール・長崎県大村市出身。2016年3月、陸上自衛隊を定年退職。2016年4月、EIDOME Consulting 開業。自衛隊中央病院高等看護学院卒業後、陸上自衛隊の看護師として、臨床現場、看護教育、部隊カウンセラーとして勤務。特に、感染管理認定看護師取得後は、自衛隊中央病院において専従として感染制御活動に携わる。
現在は、これまで培ってきた知識や技術を活かし、企業とコンサルティング契約、また、日本環境感染学会教育委員としての活動やフィットテスト研究会、感染管理認定看護師課程等において感染管理や労働安全衛生の非常勤講師として活動している。
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